穂高岳(七)
視界は皮肉なことに岳沢ヒュッテあたりに降りてきたら晴れてきました。よく考えればお陰で恐怖感が薄らいだと思えばよいでしょう。まあ北穂高岳では眺望があったし、先月は常念岳〜蝶ヶ岳間で素晴らしい槍、穂高連峰の眺望を満喫しているので、贅沢は言いますまい・・・。 余談ですが・・・。重太郎新道を下りかけて連続鎖のあたりで、また腕時計を落としてしまいました。留め金の部分が滑りやすくなっていたのか、腕に力が入る時に外れたようです。気がついたのがかなり下の岳沢パノラマあたりで、もう登って探してくる気力が残っていませんでした。『せっかく神様が取り戻してくれたのに・・・』と、かなりガックリきて上高地手前で休憩していますと、昨夜小屋で一緒だった単独の女性が熊鈴を鳴らしながら追いついてきました。 ダメ元で『腕時計見ませんでしたか?・・・』と聞くと、何と『エエ〜、これですか〜・・・』といって私の腕時計を出しました。女性がはめても良いようなデザインの腕時計(10年ほど前に3万円ほどで買った)なので貰っておこうかと思ったと言っていました。 ちょうど鎖場を降りるとき太陽の反射でキラっと光るものがあって、よく見ると時計であったということです。 2度までも戻ってくるとは何と神様にお礼を言っていいものやら・・・・・。 一時は紀美子平の紀美子さんに捧げるつもりでいたのに・・・・・。この女性登山者には上高地でアイスクリームをおごりましたが、本当にありがとうございました。名前も聞かず礼状も出さずじまいでした。 『穂高の神様ありがとうございました。』 またいつか登らせていただきます。 |